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私の東京案内 8    旧浜離宮庭園

September 30, 2016 The North American Post Staff 0

墨田川は築地市場の先で海に流れ込んでいる。その地点にある「旧浜離宮庭園」と名付けられた広々とした大庭園には、川の水を引き入れた池がいくつもある。庭園の一面は東京湾に、もう一面は築地市場を対岸に臨む運河に面しており、まさに水と緑の一大別天地である。交通の便も抜群だし、ここへはぜひ足を運びたい。  築地市場とその周辺や北東に位置する明石町を一見したあとで、勝どき橋をわたって月島へと進む前に立ち寄るのが良いだろう。築地市場からだと北西方向へ数分戻って新大橋通りへ出る。銀座方面からは例えば8丁目に近い花椿通りを歩いてきて新大橋通りへ。地下鉄の汐留駅(JR新橋駅の近く)まで来ると、庭園の入り口がある。本願寺や明石町とは反対の方角になるが、ここは銀座や魚市場の喧騒を忘れさせてくれることまちがいない。ちなみに、ここ浜離宮には浅草公園の南端から出る隅田川遊覧船で来ることもできる。川を少し遡った地点に堤防のようなものがあり、その内側が庭園であり、堤防のすきまから入った船はそこで客を降ろしたり乗せたりしている。  東京には都の管理する公園がいくつかあるが、この「浜離宮」と通称される庭園もそのひとつだ。もともとは徳川将軍家の所有、しかもかなり古くから存在した。江戸城から遠くない湿地帯に鴨猟の場をしつらえたのが始まりだが、現在も外国からの貴賓を招いて皇室や政府筋が猟をすることがあると聞いた。徳川四代目の将軍がこれに埋立てた地を加えて鷹狩りのできる地とし、また別荘〔離宮〕として使った。一般に公開されたのは1950年。東京都の所有だから入場料は300円〔シニア150円〕。東京にはこの他、日比谷公園や上野公園などの一般人が自由に使えて楽しめる、しかもアクセスのよい公共のスペースがいくつもある。この事実が東京をロンドンにもパリにも負けない世界の大都市にしている一要素だとわたしは思う。  水に囲まれた広大なこの浜離宮のなかには、「御茶屋」が三つもあり、それらと池に架かる橋は建築美術として秀でている。また、牡丹、梅、桜草など一年中それぞれの季節の花が楽しめるが、珍しいのは大手門入り口の近くにある松の大木だ。這うように伸びているのだが、樹齢600年という。 このオープンで気持ちのいい空間は今はまさに都会のオアシスだが、ずいぶん前からここにあるわけだ。庭のなかに立って目をあげると、周囲を高層ビル群が囲んでいるのがわかる。一歩外へ出ると、目の前を高架の自動路が走っている。にもかかわらず庭園は広大なので外の物音は一切聞こえない。  毎年正月の2、3日は都に属するいくつかの公園で特別な催しがある。おおむね日本の伝統的行事が一般に披露されるが、この事実はあまり知られていない。元日の明治神宮境内が、庭園と神社という違いがあるが、満員電車の中にいるかのようになることを考えると、浜離宮はまことにのどかだ。東京各地の新年の人の出については不思議に思うが、わたしはここで「放鷹術」の実演を見た。  そのために飼いならした鷹を放って野生の鳥獣を捕まえさせるが放鷹術だが、四世紀に大陸から伝わったスポーツの一種だとか。大昔から日本の天皇や著名な武士たちが楽しんできたし(家康は特に好んだとか)、江戸時代はこの庭園でも行われた。今ここで鷹による狩りが行われるのは正月の2、3日だけでただのデモンストレーションである。女性も含めて放鷹術を学ぶ人は現在もいて、その人たちが技を披露する。新年に東京にいあわせるなら、ぜひお勧めしたい。  浜離宮から南へ歩いて15分くらいのところにもうひとつ都の管理する庭園がある。「旧芝庭園」で、こちらは大名の造った庭園だ。江戸時代初期に造られて以来ほとんど変わっていない点に価値があるという。周囲にビルが林立する以前はここから房総半島が望めたとともいう。だが、浜離宮を見たあとでは規模の小ささと人工的な点が目立つてしまう。時間の関係でスキップしたほうがいいが、手軽に伝統文化の一端を楽しむ一手段ではある。ここでの催しは「三番叟」。歌舞伎の前身だそうだが、都内の伝統音楽愛好家グループの出演だった。    (田中 幸子)

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