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日系牡蠣ビジネス

September 30, 2016 The North American Post Staff 0

 今年の春先、ポートランドへの取材を兼ねて、ワシントン州沿岸を車で下った。行先は牡蠣ビジネスで盛んなサウスベンド、その先のネマーという小さな町だった。ここまで来ると、オレゴン州との境となるコロンビア川も近い。   平坦な海岸の道のりが開けた場所に小さな集落があり、二世の日系牡蠣業者だった故ジロー・ナカガワ(中川)さんの牡蠣養殖所跡があった。ビジネスはすでに閉じられているが、そこに残る当時の面影残る古い建物は当時の雰囲気、様子を十分に伝えるものだ。  潮が満ち、引き、牡蠣を積んだ船が付く桟橋。牡蠣むきの作業に使った工場。建物のはずれには牡蠣の殻が山積みとなり、丘のようになっている。そこを上り、周りを見回し写真を撮った。春先のどんよりとした天気、静寂な一瞬、日系牡蠣養殖の関係者たちの生活、ビジネスに思いを馳せた。何か特別な時間だったと記憶している。同地ではコミュニティー関係者により、記念碑の設置も考えられていると耳にした。  地元シーフードレストランなどで見かける牡蠣メニューにある「KUMAMOTO」の文字。1950年代あたり、本紙アーカイブ記事でも見ることができるが、ワシントン州、オレゴン州の沿岸で盛んに行われていた牡蠣ビジネスへ日本の牡蠣が輸入された。牡蠣と日系のつながりは深く、移民の歴史をつづった『北米百年桜』でも、一章を割いて日本からの牡蠣の輸入養殖を含め、移民初期の苦労が紹介されている。第二次世界大戦前にも多くの日系関係者が当地で養殖業に携わった。先述のナカガワ氏もその1人だ。  10月9日、シアトル市内ユニバーシティー・ディストリクトのVarsity Theaterで、ノースウエストの牡蠣業界に貢献を果たした日系人を紹介するドキュメンタリー映画『Ebb and Flow』が初公開される。牡蠣ビジネスを中心に様々な苦難を乗り越えてきたストーリー。同業界のパイオニアでもある山下ファミリーの中でも、93歳を迎える二世のジェリーさんとその家族に焦点を充てる。  午後1時から。イベントには山下さんも出席する。入場料は、3年をかけた映画政策費用をまかなうための募金となる。 (佐々木 志峰)

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シアトル図書館

September 30, 2016 The North American Post Staff 0

様々な団体、ビジネスでリーダーシップとともに活躍を見せる三世世代。シアトル公立図書館のテレサ・フジワラ会長もその1人だ。  コロンビアシティーの図書館近くで育った幼少時。「ロールモデル」と話す母親と毎週図書館に通った。2人で大量の本を借り、読書を楽しんだ。当時から培われた「読」の力と社会正義への認識。「最も民主的な場」と語る図書館での経験は、アジア太平洋系社会の支援団体、ACRSの発足に携わるなど、現在までのコミュニティー活動にも生きている。  図書館は「本」以上の意味を持つという。テクノロジーが発展し、本やメディアなどを探すのは容易となった。だが「コミュニティーの集まる場」という存在で変わることはない。高齢者にはコンピューターの指導、子供にはストーリータイム、小さなビジネスを営む人々へのワークショップ、移民者への生活のすすめ――。「図書館は地域コミュニティーの鏡となり、反映されたもの」と話す。  地元団体、機関との交流や提携も積極的に行われている。シアトル交響楽団の公開演奏、シアトル・シーホークスの地元試合ではパブリックビューイングも行った。  フジワラ会長は2010年に理事会に選出された。会長は2年目、任期は今年までとなる。図書館の今後として、自らが思い描く企画は数多く、自身をはじめとしたマイノリティー社会の資料貯蔵もその1つだ。ワ州日本文化センターなどとも提携し、一般市民が各マイノリティーの歴史、経験に「容易にアクセスし、学ぶ機会」を増やしたいという。本についても、地元作家に焦点をあて、「コミュニティーが生んだ作家たちに誇りを持ち続けることができるようにしたい」と話す。  現在、フジワラ会長ら役員を中心に、会員増加のキャンペーンを行っている。昨年の同時期、9月の1カ月で1万人増を達成した。今年はさらなる成果を見込んでいる。  現在、図書館カードの所持者は37万5千人以上という。シアトル市、キング郡の人口から見た場合、この数字はどのようなものだろうか。フジワラ会長は「まだまだ少ない。シアトル市民全員にカードを持ってもらいたい」と話す。  詳細は(206)386―4636、もしくはwww.spl.orgまで。     (佐々木 志峰)

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レストランの形

September 14, 2016 The North American Post Staff 0

本紙で紹介している寿司カシバに先日、写真撮影で足を運んだ。開店前の準備段階、あわただしいなかにも料理人、サーバーを含め、知人が何人かいた。人気、価格と敷居の高いレストランながら親しみを覚えつつ、新しいレストランとしての形も垣間見ることができた。  パートナーの1人で、入り口でドアマンを務める高橋進さんは、店前に列を作る客、店に入る客と、これからレストランという空間を真に楽しめるような気遣いをする。席を立ち、退店する客も同様で、最後まで気分良く過ごせるよう、また多少でも気分を害した場合、ドアから出る際に少しでも解消できるような「おもてなし」の心を提供する。   月に2度、お通しが変わる前、サーバーへの試食の時間がある。味、材料、すべてを理解し、客に説明できるようにするのだという。日本食や文化の深さを学ぶ機会として、従業員にとって楽しみな時間というが、「学びの時間」の表情は真剣そのものだった。  テクノロジーを含め、デジタル、モバイルの影響で、生活、住居環境は大きく変わった。レストランの形態も大きく変わっているのだろう。簡単、気軽に食せるデリ風、あるいは家庭風の店と、料理を含め空間と経験を楽しんでもらう高級店。今後、二極化はさらに強まるのかもしれないが、いずれにしても鍵となるのは、清潔さを含め、サービスの部分かもしれない。  本紙英語面では、2週間に1度、宇和島屋シアトル店の試食デモのレシピを紹介している。試食デモは長く続けられており、販促もあるが、家庭での料理の機会を増やしたいとの考えがあるという。  テレビの料理番組のみならず、ネットで一般レシピ、アイデア料理を普通に見ることができる時代だ。ある程度のレベルであれば、あらゆる料理を自宅で作ることができ、「この味」を食べるため、レストランである必要はなくなった。レストランというビジネス自体も以前と同じようにはいかない時代で、料理、食事面だけでなく、様々な部分で工夫しなければならないのだろう。  インターナショナル・ディストリクトにも新たな風が入り、新店舗を目にする。地域の風土や文化に合わせたビジネスとして注視したい。    (佐々木 志峰)

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September 14, 2016 The North American Post Staff 0

 ビーコンヒル南にある窪田庭園で2年前の夏、炎天下の中で石を黙々と打つ人々の姿があった。2週間後、7フィートになる石垣が建設され、その後日よけの屋根が加わり、庭園の新たな憩いの広場が完成した。1927年に日系移民の故窪田藤太郎氏によって建てられた庭園は、ノースウエストの景観、自然を使い、今でも多くの愛好者が訪れる「知られざる」名所となっている。本紙英語コラムニストのデービッド・ヤマグチさんも日系関係の訪問先のおすすめとして7月21日号に記している。  本紙では今週から、当時の石垣建設プロジェクトに携わった児嶋健太郎さんの連載が始まる。ワークショップに携わった人々を中心に当時の様子を振り返っている。本紙でもワークショップの開始時、完成時と取材で追っていたこともあり、プロジェクト内部や参加者の話を興味深く読ませていただいた。  児嶋さんはグアテマラ出身で幼少時から石に魅力を感じながら育ったという。当地では石業者マレナコス社でマネージャーを務める傍ら、石彫刻の作品も手掛けている。  「石には原始的な、本能的なつながりを感じます。いつもそこにあり、何かアイデンティティーを持っている。石を掘ることは、自分にとって一つの言葉のようなものです」と語る。  石垣プロジェクトを通じ、様々なネットワークが作られた。庭園関係者、日本の石工、ワークショップに参加した米国人。今後も「何がもとでつながるかわからない縁」を大切に日米をつなぐ「架け橋」の一つとなる活動を続けたいという。  新たな橋はすでに作られ始めている。ネットワークをもとに石に携わる関係者を日本から招待、米国での短期研修を実現した。東京造形大学から紹介を受けた関係者が2人、ノースウエスト石彫刻協会(NWSMA)の助成を受け、オレゴン州で現在開催中のシンポジウムに参加しているという。  「石の言葉は万国共通。色々な人同士分かり合える。それがうれしいです」と笑顔で語る。  そんな児嶋さんの人柄も伺える連載は本紙4面で毎週掲載予定。    (佐々木 志峰)

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デンショ―20年

September 14, 2016 The North American Post Staff 0

 第二次世界大戦中における日系人収容所政策の歴史を中心に日系史デジタル保存プロジェクトを続ける地元非営利団体のデンショー。9月24日に発足20周年となる夕食会を開く。  発足当時、一世はすでに世にほとんどなく、二世も高齢となっていた。一般社会で三世の活躍も多く見られ、特に当地ではマイクロソフト社などIT業界の最前線に携わる日系関係者も多かった。  当時、他にはないデジタル保存事業はそうした三世たちの技術とシアトルならではで培われた創造性、リーダーシップの引継ぎ、歴史保存の大切さを理解する二世の理解と協力が大きい。  「歴史は繰り返す」ように人種、宗教に絡んだ問題は起き続けている。多様化を続ける今はさらに複雑化している部分もある。  だが日系人に起きた出来事、心の傷、語られていないストーリー、経験は今の時代にも必ず生きると関係者は信じている。トム・イケダ事務局長がオンラインメディアに寄稿した記事は、先週本紙英語面でも転載された。第二次世界大戦で叔父が戦死、市民権を与えられず、「日本人」だった祖父と祖母が受け取った米国国旗。民主党大会で登壇、息子をイラク戦争で失った米国人イスラム教徒のキズル・カーンのスピーチに思いを巡らせた。 8月。日本では「終戦」という言葉が数多く聞かれることになる。戦争の歴史が続く「米国」にとって「終戦」とは。またキング郡政府が讃えた韓国系社会にとっては、建国の月であり、日本の植民地政策からの「解放」の月でもある。  日系人にとっては、当地であればピュアラップの集合所からアイダホ州ミネドカの収容所への移動月となる。「いつシアトルへ戻れるのか」、「これからどうなるのか」、先の見えない3年あまりの生活の最中。  そして混沌の「終戦」後。フリージャーナリストの川井龍介氏が寄稿する小説「ノーノー・ボーイ」の考察記事でも、当時一世の移民感情、二世の思い、それぞれが描写されている。 「移民者」として、また「Expat」として、いつの時代も、あらゆる側面から考えなければらない。   (佐々木 志峰)

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次世代

September 14, 2016 The North American Post Staff 0

 夏季五輪リオデジャネイロ大会は連日、盛り上がりを見せている。米国男子水泳のマイケル・フェルプス選手の金メダル獲得数が話題となっている。9日を終えて五輪金メダルの獲得数は21となった。まさに圧倒的な強さだ。2004年のアテネ大会から4度目となる五輪。31歳で集大成として臨んでいるという。  10日の男子体操総合で五輪連覇を果たした内村航平選手も同競技で「キング」と呼ばれ、圧倒的な強さを見せている。2008年の北京大会から3度目の五輪。27歳を迎え、今大会を集大成とし、前評判通りの結果を残した。  2人の「王者」に関して「集大成」という言葉を目にする。ある記事を読めば、内村選手は2020年にある東京五輪も視野に入れているとのことだが、やはり、後進となる次世代選手の登場も気になるところだ。  米国ではイチロー選手が大リーグ3千本安打を達成した。多くの安打をシアトル・マリナーズで記録され、我々の記憶にも新しい。今後もまだまだ高みを目指し、多くの記録を超えていくに違いない。これだけの大記録を達成した選手を追い、比較されるだけの選手はそうは出てこないだろう。だが、若い世代にもたらした影響も大きい。背中を追う新たなスター選手の登場も楽しみに待ちたい。  さて18年続いた秋祭りは、ジャパンフェア2016に引き継がれた。新たな趣向も加え、次世代となる主催グループへとバトンが渡され、9月3日、4日開催を1カ月後に控える。  コミュニティーも「次世代」という言葉は常に耳にする。先の記者会見では、時代とともに変わる日系社会での立ち位置についても言及していた。今の日系社会がどのように若い世代を受け入れていくか、また若い世代がどのように日系社会に関わり、リーダーシップを受け継ぐか、その試金石としての意味合いも、イベント開催の中に込められているようだ。  関係者によると、まもなくジャパンフェアへ向けた弁当販売がウェブサイト上で始まるという。詳しくは/www.japanfairus.orgまで。 (佐々木 志峰)

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リオ五輪

 夏季五輪リオデジャネイロ大会がいよいよ始まる。5日を開幕日としているが、サッカーなどはすでに戦いを始めている。  工事遅延などによる交通網整備の問題、ジカ熱の問題、ロシア選手団のドーピング問題など、大きな論争を呼んだ大会前だが、いざ開幕となれば、スポーツの祭典としての本領を発揮することだろう。  世界各地から大手メディアを中心に取材陣が足を運ぶだろうが、ここ地元コミュニティーに根付いた日系新聞社「ニッケイ新聞」など地元メディアの扱う記事に注目したい。南米初の大会となるが、日系社会の大きな同地だけに様々ユニークなエピソードを見ることができそうだ。  ウェブサイトの1記事をみてみると、シアトル・ストームで活躍し、日本女子バスケットボールチームの中心選手となる渡嘉敷来夢選手が掲載されている。つい最近までシアトルの身近な地にいた選手だけに注視することになったが、記事の内容は日本選手団をサポートするブラジル関係者を焦点に、渡嘉敷選手の隣に写る通訳を取り上げたものだった。  その通訳は元サッカー選手で日本のJリーグで長年にわたり活躍を見せてきたマルセロ・バロン・ポランクジックさん。記事によると日本語を流ちょうに使い、チームのサポートを積極的に行っているという。  バロンさんはプロ選手として様々な日本のチームに所属、各地域でのコミュニティーの暖かさもあり、日本への貢献を買って出た。こうしたネットワーク、橋渡しがあるのも交流ある国同士の強みだろう。  その他にも開会式を支える人々、日本選手団を支援するコミュニティー関係者といった「周り」を扱う記事を見つけることができる。本紙と同様、日系紙の状況は厳しいだろうが、2014年のサッカーW杯に続く一大イベントを起爆剤に良記事を配信してくれるだろう。  2週間強という短い期間。最高峰のアスリートたちの戦い、新たなスポーツのヒーロー出現といった話題以外にも、コミュニティーならではの心温まる興味深いストーリーを見てみたい。 (佐々木 志峰)

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日系政治家

 ハワイ州の日系連邦下院議員マーク・タカイ氏が20日に死去した。まだ49歳の若さで、長年にわたり州議会議員を務め、満を持して連邦議会へ初当選してからわずか1年半ほどのことだった。家族関係者、コミュニティーの無念が伝わる。  ハワイ州は長年にわたり、連邦議会にも日系議員を選出してきた。故ダニエル・イノウエ上院議員をはじめ、日本とも政界を通じ、強いパイプ役を担ってきた。現在上議の一角を担うメイジー・ヒロノ議員は日本出身、アジア系として初めての女性上院議員となった。  14年には下院で活躍、イノウエ上議にも後任候補として強く推薦を受けていたというコリーン・ハナブサ下議(当時)が、上院へ鞍替えを目指すが僅差で敗戦している。  同年の下院選挙では、ハナブサ前下議の後任議員としてタカイ氏が選出されている。タカイ氏は闘病のために再選を辞退。ハナブサ前下議に「復帰」を薦めてきたとされる。6月上旬にハナブサ前上議は下院選に出馬することを発表している。  ワシントン州では2012年にジェイ・インスリー知事が連邦下議から州知事への鞍替え選挙に臨むことで、州初となる日系連邦議員を目指し、スティーブ・ホッブス州上議が立候補したが、予備選で敗れた。ハワイ、カリフォルニアのような国レベルでの日系政治家の登場は、当地からはまだ少し待つことになりそうだ。  タカイ氏の死去は共和党の全米大会の開催中。今週は民主党の全米大会が開かれ、8月1週目には予備選挙が行われる。メディアは連日両大会の話題で持ちきりのなか、静かに死去したタカイ氏には全米日系市民協会ほか、バラク・オバマ大統領からも弔辞の声明が発せられている。  ワシントン州でも日系政治家の活躍は長年見られるが、今年はシャロン・富子・サントス州下院議員、ボブ・ハセガワ州上院議員が再選に臨むほか、11人が争う州副知事選には前述のホッブス州下議が立候補している。予備選挙は8月2日に行われ、11月8日の本選挙への最終候補者が絞られることになる。      (佐々木 志峰)

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