宇和島屋88周年

宇和島屋が88周年を迎えている。先週号で紹介したように関連イベント、記念セールで米寿を祝う。
 宇和島屋は1928年に森口富士松、貞子さん夫妻がタコマで創業。第二次世界大戦後にシアトルに移り、店舗を拡大、小売のみならず、食品卸、レストラン、不動産など様々な業務展開を行ってきた。今年は三世代目のデニス・モリグチさんが社長に就任、新世代へ向けたサービス展開を図っている。
 当地で「老舗」ビジネスの1つとして根付いている宇和島屋に対し、日本からは、日系またローカルビジネスの成功例として研究に訪れる関係者も多い。先月には愛媛大学、神戸経済同友会といったグループが当地を訪れ、宇和島屋関係者に面会、ビジネスの足跡について調査を進めていた。
 宇和島屋バイヤーの渡部美紗緒さんは、聞き伝わる話として、日本からの移民労働者が多かった時代、宇和島屋の目玉商品だったさつま揚げを現場まで売り出しにいっていたことを紹介した。揚げたての香ばしい匂いに、日本食に飢えた多くの人々が引きつけられたという。
 第二次世界大戦後に当地に渡ってきた日本人留学生、国際結婚関係者などにも手厚いサービスを施した。場合によっては、貧しい学生に食事を無償提供したという。こうした「恩」は後々に生き、彼らは現在まで続くロイヤルカスタマーとして宇和島屋を底支えしているという。
 日系移民に向けた営業サービス。シアトルに移った1940、50年代の再生の時代と日本から国際結婚者の多数移住。そして現在は日本、アジア食品が人気を呼ぶ。時代ごとに商機があったこともあり、それを確実に手にしてきたことも大きい。 
 家族経営による団結。時代ごとの商機をつかんだビジネス展開、そこに経営者の商才も含まれてくるだろう。
 神戸経済交友会の塚本晃彦代表幹事は、「商機をつかむこともありますが、やはり種を巻いて成功へ結びつけてきたということが分かります」と話す。
 前述したように、宇和島屋は経営三世代目に入り、「地元」、「老舗」という立場を確立した。アジア系食品店は当地でも各所に点在し、競争は激化している中で、若いリーダーの舵取りに注目したい。
(佐々木 志峰)