日系人小説『日々の光』を通じて ルービン氏、柴田氏特別講演 文学作品の翻訳、日米の相違を議論

小説『日々の光』を朗読しあうルービン氏と柴田氏。

 

ワシントン大学コミュニケーション学科による特別講演が5日、同大学で行われ、当地を舞台とした日系人小説『The Sun Gods (邦題:日々の光)』の作家で村上春樹小説の翻訳家ジェイ・ルービン氏と、同小説の日本語翻訳を担当した翻訳家柴田元幸氏が講演した。

 両氏は文学作品の翻訳について、「想像力を働かせることが最も重要」と議論。柴田氏は「日本語と英語の文章の、韻や文章の速さまで一致させる(ことも大切)」と加えた。翻訳家の役割については、「原文を最大限楽しみ、他の人に楽しさを享受してもらうこと」と語り、翻訳家としての苦労や喜びを説明した。

 米国と日本における翻訳家の立場について、ルービン氏は「西洋で翻訳家は目立たない」と語る一方、柴田氏は「日本で翻訳家は重宝される。昔から西洋文化と日本文化の橋渡しをしてきたのが理由ではないか」と日米での翻訳への意識の違いについて議論した。

 両氏は村上春樹氏の紹介を通じて交流をスタート。「(第二次世界大戦終戦)70周年の夏に出版するために、急いで翻訳しなければならなかった」という柴田氏に対し、ルービン氏が「柴田(氏)が翻訳をしてくれたことが何よりも嬉しかった」と語るなど、2人の友情が伺える場面もあった。

 講演の最後にはルービン氏と柴田氏が、『日々の光』の一節を英語と日本語で音読、英語と日本語の言葉の響きを聞き比べた。

 『日々の光』は、日本文学の専門家ルービン氏が初めての自身で執筆。地元日系関係者からの評価も高い。日系人収容所で生き別れた日本人の母親と米国人の息子の人生を描いた長編小説で、戦前のシアトル、戦時下のアイダホ州ミネドカ収容所、1950年代の日本が舞台となっている。

(記事・写真 = 遠藤 美波)